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2020-06-18  [0132] 「2020年版ものづくり白書」に思うこと

ものづくり白書が発行されましたので、今年も意見を述べたいと思います。

<2020年版ものづくり白書(PDF版)> (20-5-29 経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/index.html

今回は「企業変革力」と称した「ダイナミック・ケイパビリティ(*1, 以下DCと略します)」強化の必要性について、技術分野を中心に述べられています。
ニューノーマル(新常態)に対する変革の実践が迫られているためです。
この1年間で、自国保護主義、地政学的リスク、自然災害に加え、新型コロナウイルス感染拡大(*2)が、経済や企業を脅かす「不確実性」を示す象徴だったと述べています。
また、技術革新(AI、VR/AR、5G、量子コンピュータ等)もDC要素の1つとしています。

19年や18年度版と比べると、マーケティング分野に関する記述は、「ものづくり現場が直面している経営課題」(*3, *4)等で少しだけありましたので、後ほど意見を述べます。

ではまず、DCとは「企業が環境や状況が激しく変わる中で自己を変革する能力」と定義し、その成果として「イノベーションを生む」とされ、「感知(センシング)」、「捕捉(シージング)」、「変容(トランスフォーミング)」の3ステップで変革を実践します。
また、DCとの比較対象として「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」(以下、OCと略します)があり、「経営資源をより効率的に活用して、利益を最大化しようとする能力」とし、その成果は「利益拡大」としています。

DC/OCの詳細説明はP42-P45(*4)に掲載されていますが、要約すると、
(a) OCも大切だがそれだけでは不十分。
(b) 模倣、持続性、想定外発生時、自社の強みが弱みに変わったとき等、競争力維持に対するリスクや問題に直面した際はDCとの両用が必要。
(c) そこで、上記の技術革新等の波に乗って困難を乗り越えよう、そのための各種対策や関係省庁による活動や支援等を、事例含めた紹介といったストーリ仕立てです。

DCについては、これまでのコラムで述べた変革の定義や内容と類似していますので今回は意見を省略しますが、この「ストーリ展開」はマーケティングの立場からすると違和感を覚えます。
日本経済の発展や、主要先進国間での競争力維持という観点では、この展開は悪くありませんが、極端に言えば、「デジタル化の加速が、企業の持続的成長の生命線」と、見方によっては取ることもできます。
もちろん同白書でも「デジタル技術は導入することは目的でない」とP151(*4)で一言だけ述べていますが。

過去のコラムで何度も述べていますが、企業活動では、「どのようにして顧客と向き合っていくのか」の模索とその実現が根底にあり、恒久的なカスタマーサクセスの追求が自ずと変革を呼ぶものであること、そして技術は顧客の困りごとを解決するための手段に過ぎないことが、違和感の理由です。

例えば、仕事柄、CRM/MAツールのベンダーと話す機会がありますが、これらのツールは本来、困りごと解決の手段にも関わらず、ユーザがマーケティングの基礎を疎かにしたまま導入し、ついつい目的化してしまったが故に、期待した成果が出せない。
するとツールのせいにされて、退会していってしまう。

取得データに対する「洞察の基礎」となるマーケティング思考が、組織として構築/機能できていないために起こる現象ですが、更に導入後はツール利用の目的を業務効率アップにばかり目が行ってしまうといった、おかしな現象も併せて起こります。

前回のコラムで述べたように、課題や問題の本質を見誤っているために、こうした事態が生まれてしまうのです。

また、冒頭で述べた「ものづくり現場が直面している経営課題」でも、このことが表れています。
例えば、「事業環境・市場環境の状況認識」に対するアンケート結果で、「より顧客のニーズに対応した製品が求められている」が73%と最も高い点。
回答が選択式だったために、この回答が最も高かったかと推測しますが、この選択肢の準備側も回答者側も視点がずれていると考えます。

更に、「自社の強みの認識」に対するアンケート結果(複数回答)でも、「柔軟に顧客のニーズに対応できる(多品種少量生産など)」がトップで48%、「優良企業の下請企業の主力」が3位(29%)。
自社の強みの定義に対する誤解も両者にあるようです。

アンケートでの質問内容もマーケティング活動では非常に重要ですが、いずれコラムで紹介できればと思います。

今回の新型コロナ対応で日本は「自粛」という、強制力ではなく「団結」と「要請」で克服しようとしています。
これは世界に類のない日本の大いなる強みで、「企業変革力」が実行できる要素を十分に備えていると考えています。
あとは、それをいつやるのか、どのようにして行うのかが重要です。
初めての経験で、この先も不安や戸惑いが続きますが、ポジティブな思考と行動で新時代へ一緒にまい進していきましょう。

最後に、同白書でお勧めの記事がありましたので、下記に紹介します。
どれも経営、マーケティング、技術開発、生産に携わる方々にベンチマークとして有益な情報かと思います。
(a) 旭化成(株) 吉野彰名誉フェローインタビュー (P46-P47, *4)
(b) 我が国製造業にみるダイナミック・ケイパビリティ: 富士フイルムホールディングス(株) (P54, *4)
(c) 我が国製造業にみるダイナミック・ケイパビリティ: ダイキン工業(株) (P55, *4)
(d) 事業環境変化に柔軟に対応可能な1/N設備化による同期一貫生産ラインの構築: (株)デンソー (P64, *4)

*1: ダイナミック・ケイパビリティ論(戦略経営論における学術用語)は、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授のデイヴィッド・J・ティース氏が提唱。
*2: 新型コロナウイルスの影響は、20/4/1までの状況(データや情勢)が述べられており、20/4/7に発令された「緊急事態宣言」に関する記述はありません。
*3: 本文P138-P141
*4: 全体版PDFでの掲載ページは、本文ページに「+15」します。

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<関連コラム>
(1) [0129] ニューノーマルへの変革
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=133

(2) [0127] カスタマーサクセスとは?
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=131

(3) [0131] 適切な課題設定と、物事の本質の掴み方
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=135

(4) [0106] あなたのお困り事は?
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=109

(5) [0112] 自社らしさとは?
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=115

(6) [0081] 製造業の課題と解決(2018年版ものづくり白書から)
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=83

(7) [0107] 2019年版ものづくり白書とマーケティング
  http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=110

<ご注意>
本コラム記載内容は、マーケティング活動の発展を主眼としており、固有の政府や団体・企業等の推奨や宣伝、否定や批判を行っているものではありません。
また、本コラム記載内容は、発信日時点の情報です。
以上をご承知ください。
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