2019-12-20
[0117] HエンドとLエンド、どちらが攻略しやすい?
新事業構築や、既存市場での市場カバー率アップを目的としてハイエンド、ミドルエンド、ローエンドの新商品ラインアップを検討することがあると思いますが、何を基準にこれらを選択しますか?
市場カバー率アップが目的の場合は、比較対象となる既存商品がありますので、現在抱えている課題解決のために、どの領域(エンド)を攻めるべきかを把握していると思います。
また、この時にはセカンドブランド(コラム[0032]参照)やプレミアム商品(コラム[0033]参照)の考え方も参考になると思います。
では、新事業の場合はどうでしょうか。
市場の細分化によって各領域の特徴や特性を把握した上で、どこに参入すべきかを定めることになりますが、まずはハイエンド領域とローエンド領域の特徴を改めて振り返ってみましょう。
本来は10箇条全てを述べたいところですが、文字数の関係から要約します。
ハイエンド領域の一般的な特徴は、
(1) 厚利少売で質の追求となるが、価格競争は比較的少ない。
(2) 他社との差異を比較的出しやすく、顧客ウォンツを完全に満たせないために参入の難易度は高くない。
(3) 数量が出せないため、製造コストが下がりにくい。
(4) ニッチ市場を攻めるため、顧客満足を獲得できれば、リピーター(固定客)を得やすい。
(5) 規模を追わないため少ない投資から始められるが、採算性のハードルは比較的高い。
一方、ローエンド領域の一般的な特徴は、
(1) 薄利多売で量の追求となり、価格競争も激しい。
(2) 他社との差異が非常に出しにくく、またコスト最重視のため、市場への参入が容易でない。
(3) 数量増加に伴い、製造コストが比較的下がりやすい。
(4) ボリュームゾーンを攻めるため、他社との相違が出しにくく、リピーター(固定客)獲得が困難。
(5) 規模を追うため投資額が大きく、また採算性のハードルも非常に高い。
上記要素に加えて投資回収期間の長短でも価格設定や採算性が変わりますし、他にも重要な比較要素があるものの、一般的にはハイエンドからの参入の方が、リスクが比較的少ないと考えます。
日本企業は機能・性能を付加しがちという点や、メリハリ化や価格設定が苦手と、これまでの経験から感じます。
一方、ローエンドの場合は画期的なイノベーションが必須ですが、コストを大幅に下げる、例えば30%下がるようなイノベーションは、なかなか生まれないのが現状と捉えています。
と、ここまではハイエンドからの参入を肯定していますが、本当にそうでしょうか?
「販売(売り切り)」モデルなら上記のとおりですが、「リカーリング(サブスク)」モデルは逆になると捉えています。
理由はコラム[0089]や弊社発行のホワイトペーパーで述べたとおり、日本では企業の購買能力が低下し、大きな投資をせずに製品・サービスを利用する時代へ変わるためです。
消費者向けも同じことが言えるでしょう。
先端技術や新技術の登場で、いわゆるイノベータ理論(コラム[0025]参照)のリスク歓迎型、消費者で言えば一部の超富裕層やマニア向けなら、リカーリングにおいてもハイエンドからの参入という手法は十分あり得ます。
また、複数ラインアップ化(プレミアム版、スタンダード版、お試し版)して、プレミアム版への移行を促す戦術も当然必要になることでしょう。
更にこのビジネスモデルは、新規開拓によるユーザ数の確保よりも、既存利用者向けが収入の源泉となりますので、長く利用していただくためにも提供サービスの向上、つまり質の向上が大切になります。
以上から共通して言えることは、「量の追求よりも質の追求」が重要となります。
みなさんは、自身の事業や自社製品の将来について、どのように考えていますか?
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<関連情報>
ホワイトペーパー: 「IoT/AIを利用したリカーリングビジネス構築の手引」 (産業用機器製造業向け)
http://www.takumi-marketing.jp/file/download/TKM-SC-19017-00(19-06).pdf
<関連コラム>
(1) [0012] 細分化と絞り込み、そしてポジショニング
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=13
(2) [0032] セカンドブランド構築時の注意点
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=33
(3) [0033] プレミアム商品を考える
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=35
(4) [0089] [祝]大阪万博2025
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=91
(5) [0025] 新商品を発売したのに・・・(その1)
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=26
(6) [0101] 令和時代のマーケティング
http://www.takumi-marketing.jp/column.cgi?id=104
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